悶々と眠れぬ夜は淫(みだ)ら夢に誘(いざな)はれたし寝返りをうつ
夜の底に赤き椿の落下する寂しき花の音聴こえぬか
藤圭子の昭和の夜を歌ふこゑいのちを絞るこゑ胸に沁む

悶々と眠れぬ夜は淫(みだ)ら夢に誘(いざな)はれたし寝返りをうつ
夜の底に赤き椿の落下する寂しき花の音聴こえぬか
藤圭子の昭和の夜を歌ふこゑいのちを絞るこゑ胸に沁む
ハツ子さんよそろそろため口で話さうやよそゆきことばは疲れるだらう
これまでの人生に悔いがいくつかある然(さ)れど生きてゐるそれだけでよし
満作の花咲くところ風寒く卒塔婆が響(な)る安養寺墓地
<主人メモ> 心臓ペースメーカー移植より2カ月。
在りし日のお伝のすがたに似もつかぬ髑髏を抱きて嗚咽しやまず
浅右衛門吉(よし)亮(ふさ)の首切りの失敗を心に泣くかつぶさに誌す
北側のベランダのバケツに冬深しことしはじめての薄氷を割る
<主人メモ> 今日も全き青天である。 綱淵謙錠『斬』読了。 以前に一度読んでいるのだがハードな読書であった。 三島由紀夫と森田必勝の切腹と介錯への綱淵の見解を確かめたくて、あらためて読み直した。 しかし、山田浅右衛門一族の悲劇を語るその哀歌(エレジー)は圧倒的な感動を誘う。 その終盤に高橋でん斬罪後日譚があり、情夫・市太郎(夢幻法師)がお伝の頭蓋骨と対面する哀切なる場面がある。
あらたまの朝日かがやく地平線しづかなりけり鳥鳴かざれば
下肢の筋肉(にく)衰へたるか足踏むに頼りなければ木の傍(そば)に拠る
震災碑に「横死之靈」の文字ありき「横死」ひさびさに聴きし語なりき
<主人メモ> 浄土宗龍池山増全寺
宙天を二十四日の月浮かぶ朝七時半うすき雲行く
今日逢ふは紅梅、椿、春の色。雀(こ)躍(をど)りしたきいのちの色なり
悪夢より淫夢がよろし然れども悪夢に目醒む夢に死にき
<主人メモ> 暁闇、夢魔に苦しむ。 悪魔が出てくるわけではないのだが、夢の空間そのものに悪意がある。 旅の最中に帰りの駅を探す夢をたびたび見る。 今朝は100mほどの絶壁の鎖場、登り切れない人が次々に落下してくる。 死体の山。死にたくない。 ここは無理だと思い、別途駅への道を探るものの、 いつまでもいつまでも山肌の崩れた砕石場のような場所から抜け出せない。 途中飛行したりもするのだが、ここで果てていくのか。
笠雲といふより帽子雲かぶり雪の少なきことしの富士は
ぽつり、ぽつり梅の花咲くところある冬風強きに白き花咲く
<主人メモ> 寒川神社に初詣。その途次、富士山にかかる笠雲を見る。
七草を茹でたる汁に爪を浸け初爪を切る縁起よきかな
<主人メモ> 今日は「爪の日」でもあるらしい。
生活のなにが変わるか偏屈房主人としては慎むべきか
<主人メモ> 夕刻、1都3県に緊急事態宣言発令される。
鳶となり町の上空を遊弋すとんがり屋根を探すがごとく
冬の田のひろがるところ鳩の群れ、すずめの群がり交差して飛ぶ
行く先にすずめ集まる。わが影を察知したるかいつせいに飛ぶ
<主人メモ> 今日は「色の日」だそうで、今年のグッドカラーはwhite。まあ、どうでもいいか。