雨後の苔にひかりありけり夜の室に端坐妄想するに思ひ出づ
天に花咲け、地に実着け 福豆を撒く 福豆を喰ふ

雨後の苔にひかりありけり夜の室に端坐妄想するに思ひ出づ
天に花咲け、地に実着け 福豆を撒く 福豆を喰ふ
きさらぎの初めの朝も西空にくらげ色した月高くあり
日没る際のみなみへ延びる雲の底その金色の荘厳をみよ
<主人メモ> 堂場瞬一『バビロンの秘文字』読了。 緊急事態のさ中どうにもやるせない鬱屈があるのか 物語の世界に溺れたくて読みはじめたのだが、 なかなか手ごわいサスペンスであった。
谷津駅まで千三百円の硬券購ふ三日つづけて改札口前
冬ごもりのやうなる日々を重ねきて一月尽は酒飲むか少し
ちびりちびりしやぶる程度の酒なれどハツ子よろこぶ心温もる
<主人メモ> 夢は谷津駅行きの切符を買う場面。 それが三日に及ぶ。 駅員の嫌そうな顔。 この谷津駅こそがわが悪夢の鉱山地帯の最寄り駅に違いない。 じっさいの谷津駅は京成電鉄にある。 千葉県習志野市。 縁もゆかりもないし、わが悪夢の谷津駅とはなんの関係もなさそうだが、 なにゆえ私はこの駅周辺地に悩まされるのであろうか。 なにゆえ谷津駅なのか。
燃やすゴミ20ℓの袋づめそこそこ重いゴミ捨て場まで
土曜日の八時前後は混みあつてゴミ集積場に六人が入る
ゴミ袋ぶら提げてくる六人の入りて出てくる踊るが如くに
<主人メモ> 土曜日は可燃ゴミの取集日である。
あけぐれの奥山照らすひかりあり十六夜月沈まざりけり
<主人メモ> 午前6時半、西の空の山近く、耿々たる残りの月。
読む本は沢山あるがけふも二冊買ひたきたりしがいつ読むのだらう
<主人メモ> あまり天気はよくない。午後からは雨。 その雨を恐れて早く出た散歩中、川を渡り隣の町の本屋に立ち寄る。 渡部泰明『和歌史なぜ千年を越えて続いたか』、常盤新平『片隅の人たち』を買う。
『片隅の人たち』ひらけばトップ、カスミ懐かしき名がある渋谷界隈
<主人メモ> 渋谷の地下の喫茶店トップにたびたび吉岡実を見かけた。
キッチンのボウルに浸す菠薐(はうれん)草(さう)――、朱(あけ)の根の色乳首(ちくび)の如し
冬の雨の降るか降らぬか境目を散歩してしばし老い肌うるふ
<主人メモ> 今朝がたもまた悶々と夢を見る。 記憶は薄いが女性ありたり。
われらまた常在戦場のごとき世を生きて深紅の薔薇斬り落とす
<主人メモ> 新型コロナウィルス感染者、全世界で一億人を超す。