2021年2月9日(火)

橋をわたりとなりの町へ鴨遊ぶ川のながれを覘き込みつつ

清響乾坤を包む一瞬をおもひみむとし想ひみがたき

<主人メモ>
綱淵謙錠『史談往く人来る人』を読みはじめるとすぐに

     五十余年の夢
     覚(さ)め来(きた)って一元に帰す
     截箭(せつせん)弦(つる)を離るる時
     清響(せいきよう)乾坤(けんこん)を包む

という素敵な五言絶句に出会った。
江戸時代前期、越後高田藩のお家騒動の際、
将軍綱吉の裁断で切腹を命ぜられた小栗美作の辞世である。
綱淵は、この綱吉の断を「自分の将軍襲位に反対した越後光長と大老酒井忠清に
復讐するための政治裁判だと見ている」と複雑な政治劇を読み取り、
小栗美作の人物に賛辞を贈る。
切腹も「見事である。」「辞世もいい。」「生死の転瞬を矢の弦を離れる響きに託して」と語る。
たしかに清新すがすがしい気を感ずる作である。

2021年2月7日(日)

蓮實重彦の暴言のごときが楽しくて新書一冊たちまちに読む

ちょっと「濃い」コーヒー飲めば妻と観し古き映画の接吻(キッス)場面(シーン)想起(おも)

<主人メモ>
蓮實重彦『見るレッスン 映画史特別講義』を読む。
『スピオーネ』が理解できない人は映画を見るなとか、
きわめつけはディズニーなどなくなったほうが、
世の中にとって健全だと本当に思いますとかの暴言、断言が心地よく一気に読み了える。
「存在の色気」という語にも心惹かれ、
お薦めのデヴィット・ロウリー監督『さらば愛しきアウトロー』、
ぜひとも観たいものだ。

2021年2月6日(土)

脂質異常と言はれても困るトマトやワカメ、昆布は好きだが

実朝の日課観音をおもふなり心弱りか祈りたくなる

昼食は昨夜の牡蠣鍋の残り汁雑炊(ざふすい)にして卵を落とす

1月に受診した健康診断の結果が送られてきた。
昨年の診断では洞不全症候群を指摘された検査施設であり、
それは心臓ペースメーカーの移植手術につながったのだが、
今年はLDL(悪玉)コレステロールが高いと注意された。
一日8000歩、野菜・海藻・キノコを多く摂り、
アルコールは控えろとコメントがある。手術後アルコールは控えている。 
しかしどうして脂質異常がわが身に起こっているのか。
そんなに無茶な食事をしているつもりはないが。

2021年2月4日(木)

天平時代の謹直なる文字『南海寄帰(なんかいきき)内法伝(ないほうでん)』断簡

<主人メモ>
八木正自『古典籍の世界を旅する』読了。
いささか自慢げなところが鼻につくが、
古書・古文書を扱うことを渡世のなりわいとする商売人としてはしかたないところだろう。

座具一布肩にみとめて苾芻(びつしゆ)ひとり莞爾と笑ふ那爛陀(ナーランダ)寺に

<主人メモ>
「苾芻(びっしゅ)は僧、「那爛陀寺」はインドの古寺。