2025年2月20日(木)

今日も朝から晴れているが、寒い、寒い。

  曇り空には薄き雲その雲透けて冬の日がさす

  やがては雲の透き間に出でてくる日のほのぼのと翳りゆくなり

  カップに湛へその紅茶飲むわれイギリス流の紳士ならむか

『論語』衞靈公二七 孔子曰く、「巧言は徳を乱る。小、忍びざれば、則ち大謀を乱る。」

ことば上手は徳を害する。小さいことにがまんしないと大計画を害する。

  巧言は徳を害し小さいことを忍びざれば大謀を害す

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六四 仁徳天皇

そこで天皇は、皇后のいる入口に立って、歌った。

つぎねふ 山城女の      山城女が小鍬持ち
小鍬持ち 打ちし大根の    掘れば大根の葉がさやぐ
さわさわに 汝が言へこそ   さわさわざわざわ君がまた
うち渡す (や)(は)えなす    嫉妬騒ぎにこのように
来入り(まゐ)(く)れ         人をぞろぞろ連れてきた

右の、天皇と皇后との歌った六首は「志都歌の返し歌」という楽名の歌である。

  大根の葉のさわさわとさやぐやうに騒ぎおこせば人ぞろぞろ来

2025年2月19日(水)

寒い、寒いが、晴れ。

梅崎春生『十一郎会事件 梅崎春生ミステリ短編集』を読む。基本的に戦争から帰ってきた者が中心になるミステリというか不気味な物語が続き、息をもつげぬおもしろさがある。その技巧的な文体がうれしい。梅崎春生も復員兵であった。

  恋闕はあはれを誘ふ京三条高山彦九郎宮城に向かふ

  いつのまにか伴林光平に化身して『南山踏雲録』書きてゐしなり

  南山を越えむとしたる天誅組維新のさきがけかなしきものぞ

『論語』衞靈公二六 孔子曰く、「吾は猶ほ史の文を闕き、馬ある者は人に借してこれに乗らしむるに及べり。今は則ち亡きかな。」

記録者が慎重で疑わしいことは書かずにあけておき、馬を持つ者が人に貸して乗せてやるというのが、まだわたしの若いころにはあった。今ではもうなくなってしまった。

一種の懐旧譚だろうか。

  昔は馬あるものはそれを貸し記録に収めず今はなかりし

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六三 クチヒメ

クチコノ臣が、(六二)の歌を申し上げるその折は、大雨であった。その雨も避けず殿前に平伏すると、皇后は裏戸の方に出て、後に廻れば出てくるのであった。匍い廻って、庭の中にひざまずいている時に、庭の水溜りが腰までも深く、クチコノ臣は赤い紐をつけた青摺の衣服を着けていたので、その水溜りの水が赤紐に触れて、青色もみな赤く染まってしまった。クチコノ臣の妹のクチヒメは皇后にお仕えしていたが、これを見て歌う、

山城の 綴喜(つつき)の宮に        皇后さまに申し上げます
もの申す あが(せ)の君は      わたしの兄の有様は
涙ぐましも            涙なしでは見れませぬ

  クチノコノ命はわが兄その有様涙なしには見ることできず

2025年2月18日(火)

雲だらけだが、日がさしてくる。

  ある時はクサヤのごとき老母なり臭ひふりまき廊下を歩く

  肋骨あらはにむきだしシャツを着る恥ずかしき思ひもすでにあらず

  三度目の悪性リンパ腫質悪し二度と直らぬ不具合ばかり

『論語』衞靈公二五 孔子曰く、「吾の人に於けるや、誰をか毀り誰をか誉めん。如し誉むる所の者あらば、其れ試みる所あり。斯の民や、三代の直道にして行ふ所以なり。

人に対して、誰でもむやみに毀ったりほめたりはしない。もしほめることがあれば、はっきり試した上でのことだ。今の人民も(夏・殷・周)三代の盛時にまっすぐな道に従って行っていた人々と同じだ。(軽々しく毀誉をはさむことはできない。

  誰をしも毀誉の差つけることはせず今の民でも直道に行ふ

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六二 仁徳天皇

また、

つぎねふ 山城女(やましろめ)の        山城女が鍬持って
小鍬(こくは)持ち 打ちし大根(おほね)       掘った大根の根のように
(ね)(じろ)の (しろ)(ただむき)          白いそなたの(かいな)取り
(ま)かずけばこそ          抱いたこともなかったら
知らずとも言はめ         いまさら知らぬと言えもしよ

  そなたのことを抱いたこともなかったら愛しているなどなどと言はざるものを

2025年2月17日(月)

雲があるが、晴れている。午後、寒くなるらしい。

  西連山の上には大き月残るこのひかる月うつくしかりき

  山脈の上空に浮かぶ残りの月後朝なればぼやけて見ゆる

  山脈の稜線に沈む残りの月円き満月妙に明るむ

『論語』衞靈公二四 子貢問て曰く、「一言にして以て終身これを行なう者ありや。」孔子曰く、「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿れ。」

ひとことだけで一生行なっていけるということがあるでしょうか。まあ、思いやりだね。自分の望まないことは人にしむけないことだ。

  ただ一言に終生これを行なひしことあるらむか孔子、恕と答ふ

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六一 仁徳天皇

丸邇臣クチコをつかわして、

御室(みむろ)の その高城(たかき)なる     御室の高城の大豕子の
大豕子(おほいこ)が原          原にある名の池心
大豕子が原にある       その心さえ今は無く
(きも)(むか)ふ 心をだにか      そなたはそむいて避けるのか
相思はずあらむ        思う心も消えたのか

  まだわれを信ずることができぬのか相思ふこころも汝に失はれたるか

2025年2月16日(日)

曇り空、そして寒い。17℃になるというが。

  山茶花の赤き花々散り落ちて避けんとすれど踏みつぶしたり

  花赤く咲きたる山茶花この垣を歩き通らむ地に花落つる

  この赤きところをいつか通りぬけ異界へむかふわれの行末

『論語』衞靈公二三 孔子曰く、「君子は言を以て人を挙げず、人を以て言を廃せず。」

君子はことばによって(立派なことをいったからといって)人を抜擢しない、また人によって(性格が悪いからなどといって)ことばをすてることはしない。

  君子なればことばによって抜擢せずまたはことばによって排除せず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六〇 仁徳天皇

天皇は、皇后が山城から大和の方に上られたと聞いて、舎人のトリヤマという者を使として差向けた。その時の歌、

山城に い(し)け鳥山      急げ 鳥山
い及け い及け        山城へ
(あ)が愛し妻に         わが愛し妻は山城ぞ
い及き会はむかも       追いかけ行って妻に会え

  山城に急げ鳥山急げ急げわが愛しき妻は山城にゐる

2025年2月15日(土)

雲は少しあるものの、よい天気である。

  いつのまにか貪欲になるわれなるか意地悪しもからすのごとし

  からす飛ぶ。町の上空に旋回し睥睨すべし恥部まで覗く

  からすうるさければその上をとんび旋回しとんびの声する

『論語』衞靈公二二 孔子曰く、「君子は矜にして争はず、群して党せず。」

君子は謹厳だが争わない、大勢といても党派をくまないそうです。

  君子といふものは謹厳にして争はず大勢といて党派をくまず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 五九 イハノヒメノ命

山城から廻って、那良山の登り口に着いて歌う。

つぎねふや 山城川を      山城川をゆらゆらと
宮上り わが上れば       のぼりのぼって奈良山の
青丹よし 奈良を過ぎ      山の口まで来て見れば
小楯(をだて) 倭を過ぎ         わたしの行きたいその国は
わが見が欲し国は        奈良のむこうの倭村
葛城(かづらぎ)高宮            倭の村をまた過ぎて
我家(わぎへ)のあたり          葛城に坐す親の里

こう歌って、また山城の方に引き返し、しばらくの間、筒木の韓人のヌリノミの家に滞在した。

  山城川をさかのぼり奈良山すぎて葛城高宮我家のあたりに

2025年2月14日(金)

晴れ、冷たい。

有栖川有栖『砂男』を読む。単行本未収録短編集である。「女か猫か」「推理研vsパズル研」「ミステリ作家とその弟子」「海より深い川」「砂男」「小さな謎、解きます」の六編。実を言うと有栖川有栖のミステリははじめてだ。期待するところもあったが、期待するほどではなかった。言ってみれば、ミステリの論理なんだな。空中で話をすすめているようなところが、どうも。しかし「ミステリ作家とその弟子」「砂男」はおもしろかった。

  梅の香の充満したる公園のほぼ満開の六本の木

  爛れたるごとくに白梅ひらきたる香も淫蕩に匂ひくるなり

  梅の香の匂ふ公園にわが入れば菅原道真に化身したりき

『論語』衞靈公二一 孔子曰く、「君子は(こ)れを己れに求む。小人は諸れを人に求む。」

君子は自分に反省して求めるが、小人は他人に求める。なんでも悪いことは他人のせいにする。それは君子ではない。

  おのづから常に反省するが君子なんでも他人のせいにするは小人

『古事記歌謡』蓮田善明訳 五八 イハノヒメ命

仁徳天皇は、この頃、ヤタノ若郎女と仲良くしていた。そのことをイハノヒメ命に告口するものがいた。皇后は非常に恨み、かつは怒り、船に載せてあった三角柏を、一つも残らず海に投げ捨てた。そこを御津の崎という。そうして、宮中へ帰らず、難波を避けて、堀江をさかのぼり、淀川を山城まで上った。この時の歌。

つぎねふや 山城川を      山城川をゆらゆらと
川上り わが上れば       のぼって行けば岸の上に
川の辺に (お)ひ立てる      生えて茂った烏草樹の木
(さ)草樹(しぶ)を 烏草樹の木      茂る烏草樹のその下に
(し)が下に 生ひ立てる      生えた椿の葉も広く
葉広 五百箇(ゆつ)(ま)椿(つばき)        咲くその花も赤々と
其が花の 照り(いま)し       その花のようにかがやいて
其が葉の (ひろ)り坐すは      その葉のように大らかに
大君ろかも           わが大君のとうとさよ

  嫉妬深きイハノヒメノ命が歌ひたる山城川を上る歌大君どうか尊くあれよ