2021年 1月13日(水)

橋梁の端を歩めば川淀にわが影映る少し前(さき)ゆく

鵄の鳴くこゑに暫時(しばし)を空仰ぐ雲無き青天を三羽が旋(め)回(ぐ)る

橋梁に覗けばいつもの鯉がゐる浅瀬を遡(のぼ)り泥巻き遊(すさ)ぶ

橋梁を渡りて帰る河原にはわが影われを追うて従(つ)きくる

塞(くな)神(ど)にはどんど火に焚くお飾りやしめ縄を積むくなど隠れき

<主人メモ>
今朝の散歩では橋を渡り対岸の河原に降りてみた。
土手に桜並木があるのだが、蕾はまだまだ小さい。

2021年 1月10日(日)

在りし日のお伝のすがたに似もつかぬ髑髏を抱きて嗚咽しやまず

浅右衛門吉(よし)亮(ふさ)の首切りの失敗を心に泣くかつぶさに誌す

北側のベランダのバケツに冬深しことしはじめての薄氷を割る

<主人メモ>
今日も全き青天である。
綱淵謙錠『斬』読了。
以前に一度読んでいるのだがハードな読書であった。
三島由紀夫と森田必勝の切腹と介錯への綱淵の見解を確かめたくて、あらためて読み直した。
しかし、山田浅右衛門一族の悲劇を語るその哀歌(エレジー)は圧倒的な感動を誘う。
その終盤に高橋でん斬罪後日譚があり、情夫・市太郎(夢幻法師)がお伝の頭蓋骨と対面する哀切なる場面がある。

2021年 1月9日(土)

あらたまの朝日かがやく地平線しづかなりけり鳥鳴かざれば

下肢の筋肉(にく)衰へたるか足踏むに頼りなければ木の傍(そば)に拠る

震災碑に「横死之靈」の文字ありき「横死」ひさびさに聴きし語なりき

<主人メモ>
浄土宗龍池山増全寺