2021年2月13日(土)

五千歩をあるいてくればここは何処(いずく)しだれ梅紅き花着けてをり

先生の歌集をさがす本の山、本棚の奥にやうやく揃ふ

<主人メモ>
京都の青磁社から『岡野弘彦全歌集』の膨大なゲラが届く。
解題を書かねばならぬ。

2021年2月12日(金)

ボンカレーのボンとは何かと問ひたれど誰も答へ得ず肉だと決めつ

小学生のオレでもこれならできさうだ鍋に三分はけつこう長い

駅前のさくらの枝に早き花枝には枝のゆゑよしあらむ

<主人メモ>
今日は、今から53年前の1968(昭和43)年2月12日、
ボンカレーが初めて発売された日だそうだ。
ボンカレーには、お世話になりました。

2021年2月9日(火)

橋をわたりとなりの町へ鴨遊ぶ川のながれを覘き込みつつ

清響乾坤を包む一瞬をおもひみむとし想ひみがたき

<主人メモ>
綱淵謙錠『史談往く人来る人』を読みはじめるとすぐに

     五十余年の夢
     覚(さ)め来(きた)って一元に帰す
     截箭(せつせん)弦(つる)を離るる時
     清響(せいきよう)乾坤(けんこん)を包む

という素敵な五言絶句に出会った。
江戸時代前期、越後高田藩のお家騒動の際、
将軍綱吉の裁断で切腹を命ぜられた小栗美作の辞世である。
綱淵は、この綱吉の断を「自分の将軍襲位に反対した越後光長と大老酒井忠清に
復讐するための政治裁判だと見ている」と複雑な政治劇を読み取り、
小栗美作の人物に賛辞を贈る。
切腹も「見事である。」「辞世もいい。」「生死の転瞬を矢の弦を離れる響きに託して」と語る。
たしかに清新すがすがしい気を感ずる作である。

2021年2月7日(日)

蓮實重彦の暴言のごときが楽しくて新書一冊たちまちに読む

ちょっと「濃い」コーヒー飲めば妻と観し古き映画の接吻(キッス)場面(シーン)想起(おも)

<主人メモ>
蓮實重彦『見るレッスン 映画史特別講義』を読む。
『スピオーネ』が理解できない人は映画を見るなとか、
きわめつけはディズニーなどなくなったほうが、
世の中にとって健全だと本当に思いますとかの暴言、断言が心地よく一気に読み了える。
「存在の色気」という語にも心惹かれ、
お薦めのデヴィット・ロウリー監督『さらば愛しきアウトロー』、
ぜひとも観たいものだ。