今日は雨だ。時折止む。
トラクター雨の田んぼを折り返す
ひよわなる田の苗しづかに雨が打つ
曇天に柘榴の花の朱著くあヽただ雨に打たれてゐたき
梅仕事せしゆゑならむどことなく芳熟の香のただよふてゐる
今日は雨だ。時折止む。
トラクター雨の田んぼを折り返す
ひよわなる田の苗しづかに雨が打つ
曇天に柘榴の花の朱著くあヽただ雨に打たれてゐたき
梅仕事せしゆゑならむどことなく芳熟の香のただよふてゐる
どんよりしているが、雨ではない。
今日の雲古のかたちも臭ひもまあよからう朝の便壺のぞきこみたり
アメリカザリガニを狙って水路を探る家族がいる。
田を囲む水のながれに潜みをるアメリカザリガニ深きに退る
叫声は少年に起こる。小女子は平気で蝲蛄を手づかみにする
手づかみにざりがに誇る処女なり
朝から雨、激しい雨。今日も早朝から梅仕事。昨日は梅干を仕込んだが、今日からは梅ジュースである。夕方、雨は上がった。
4ℓ壜二本に梅干1Kづつ梅雨明けごろを待たねばならぬ
今年貰ふ梅の香りの熟したり布巾に摩るやさしくやさしく
こふくべは枇杷の別名皮をむく
常盤新平『片隅の人たち』読了。戦後の翻訳者たちの青春群像が実話をベースに展開する。楽しく、ペーソスあふれる一冊であった。昨夜、妻が梅を10キロほどいただいてきた。例年のことだが、例年より早いし、梅も大きい。
青梅の匂ひ熟れたる部屋のうちもんもんとするは梅の精かも
梅漬けのガラスの瓶にひかり差す六十五年三日目の朝
椎の木の切り倒されて今年夏
河川敷の風景がまた変わる。
鮎釣りびと三日目にして減りにけり
鮎漁解禁から三日目。
年金事務所へ。一度では用が足りず。明日もまた行かねばならぬ。こんなところがもたついてくるのが老齢化なのだろう。今日、介護被保険者証が届いた。老人の仲間入りだ。
山法師、沙羅の木白き花咲かせざくろ朱の花、あぢさゐの藍
つつぴ、つつぴ四十雀鳴きすずめ来るひよどりするどく樹木ざわめく
生くるための手立ての一つ年金をもらふ書類のややこしややこし
今日から6月。気持ちの良い日だ。しかし、大山は夏雲の中。
大山は夏雲どつしり雲ん中雨ふるところに美女仏降り来る
越後高田のちまきいただく笹はがし黄な粉まぶして口にほおばる
中庭の枇杷にも実る小さき実背伸びして触る毛羽立つ果皮に
晴天というわけではなさそうだ。
山椒の実の粒水にしづかなり星なき夜は山椒を煮る
抒情詩人は声太くしてあの岩のトンネルのむかうに草つみてをり