2021年6月13日(日)

曇り空、午後少し雨がふる。

  梔子の淋しき花の香りあり少し遅れて樹をふりかへる

  中新田の田に水分ちほとばしる大谷水門に夏のひかりあり

  花ざくろ坂あるみちに毀れたり

  所属せずにそろそろ十年わが立ち位置孤立における連帯もあ

2021年6月12日(土)

今日は、また暑い。

頭に皿をのせて、変身

  変身して散歩におどける河童なり畑に盗む胡瓜(キューカンバ)齧り

厚木高校の図書室の窓からは泰山木の花が下にみえた。文庫本の『伊東静雄詩集』を読んだのは、この図書室だった。「すべてのものは吾にむかひて/死ねといふ、/わが水無月のなどかくはうつくしき」(「水中花」『夏花』)

  図書室にみおろす泰山木の白き花あはれこの花に育てられたり

  けふ咲くか泰山木の花おもふ

2021年6月11日(金)

今日も似たような天気だ。暑い。

砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』読了。この時代小説が思いの外よかった。悲運にみまわられながらも登場人物の心根がなんとも明るいのだ。

  枯れてゆくわがいのちかも夏色のメタセコイヤの木を仰ぐなり

  あたらしき夏のいのちをこの老いに少しくたまへみどりの葉叢

  田の中の道にザリガニ滅びたり

2021年6月10日(木)

またまた今日も暑い。

6日の「日曜美術館」で観たガザ地区の画家たちの絵のことをおもっている。

  パレスチナ・ガザ地区の画家の絵をおもふいのちの絵いのちの色いのちのかたち

梅しごとをしながら見ていた。ガザと比べてこの国の平穏に暗然とするものの、この平和はやはり大切なのだ。

  口腔に氷砂糖を泳がせてガザの戦禍に茫然たりき

2021年6月9日(水)

今日も暑い。新型コロナウィルス接種会場へ89歳の母に付き添う。

  黒日傘にマスクの女ぞろぞろと列なして歩く枇杷の木に近く

  枇杷の木の下にはいくつもの実が落ちて堆くなる腐れ実あまた

  これの世の汚れをよそに山ぎはを旋回する鷺を遠く目に追ふ

  日傘の上に尺取虫が落ちてくる

2021年6月8日(火)

晴天、そして30℃。暑い。

  苔の上に夏つばき白き花落す今朝のひかりの届くところに

子どもたちの使っていた部屋に、海外みやげのスノー・ボールが残っている。

  巴里の町のスノー・ボールを揺らしたりエッフェル搭はふぶきの中に

  シャンゼリゼ通りは小雪のふりはじめジュリエット・グレコ「パリの空の下」

2021年6月7日(月)

今日もどんよりとしている。脳外科の診察の日である。まだ完全に脳内の血液はなくなっていない。3カ月後にまた再診だ。

  早苗(さなへ)()の水に滑空降下する鷺つかのまを水面(みなも)に映ず

  高所より巧みにこの地に降下する鷺の流麗目放ちがたし

  診察の結果にこころ折れたるか鷺のすがたに圧倒されたり

  鷺けふはたしかに白し田に降る