2021年8月9日(月)

長崎忌

  八月九日、長崎の街に悪逆のひかりあり人を殺すひかり

台風9号の余波か、朝から度々豪雨。気圧の影響か眠い、怠い。

  圧しくる天の力に抗へずあばらあらはに痩せ(ぢぢい)ねむる

  夏ぶとん掛けての昼寝(ひるい)に腹渋るさつき氷菓を(たう)ぶるゆゑか

  懐かしき人からの電話重なりて今日はなんだかたのしき日なり

ペットボトルのお~いお茶のラベルの投稿俳句にこんな句を発見。
 衣替え一人称も替えてみる 細野柚生さん(15歳)

2021年8月8日(日)

台風10号の影響で昨夜から雨が降り、午前中風も強くなっていたが、午後3時過ぎには晴れる。

  台風の進路変はれば雨の量予測より減るそれでもどしやぶり

  内廊下の床には蟬の死ににけり台風の雨を避けて入りしか

  今日もまだ腕は痛いと妻はいふ肺腑をえぐる痛さにあらねど

娘のアパートに梅ジュースを届ける。

  梅ジュースは免疫力の素なりと娘が言へば腹こそばゆき

2021年8月7日(土)

畑中章宏『廃仏毀釈―寺院・仏像破壊の真実』読了。廃仏毀釈は、後の神社合祀とともに近代日本の国家体制の横暴であったが、地方により差異があり、損害の違いもあった。より細かく検討する必要があるということだろう。私が育った隣町も今では神社になっているが、おてんのうさんと呼ばれ、牛頭天王を祀る社であった。

  明治維新の汚点の一つと思ふなり六地蔵の首いまも戻らず

  その神のすがた知らねど素戔鳴(すさの)()より牛頭天王がよし不可思議の神

妻一回目のウィルス予防注射。

  無花果の実らぬ木下妻も老い

2021年8月5日(木)

藤沢周『世阿弥最後の花』読了。佐渡に流された世阿弥晩年の姿を描いて、おもしろく読んだ。能の詞章や和歌を交えた彫琢された文体がいい。世阿弥同様、佐渡に流された順徳院像も印象的だ。世阿弥は順徳院の追悼の能を舞う。順徳院の歌を読んでみたい。

  ひよどりの三羽が中庭(パティオ)をかけぬけるいつものやうに朝がはじまる

  朝顔の咲く家のまへをとほるとき老いのこころのかろやかならず

  佐渡に渡る世阿弥元清 晩年の翁のすがたおもひみがたし

神奈川県の新型コロナウィルス感染者、1500人を越す。

2021年8月4日(水)

今日も暑い。油蟬が朝からうるさい。

  九階のベランダに鳴く油蟬日の沈むときひときは高く

  中庭のあけぼの杉に生まれたる蟬とおもへば親しきものを

  樹の幹と空中に過す十日ほど腹部鳴動ひたすらなりき

  土の内に七年を過ごす幼虫に蜜のごとき時間(とき)あらばよきかな

2021年8月3日(火)

息子の31回目の誕生日です。今日も猛暑。

  朝焼けは薄桃色から橙色(たうしょく)に雲を染めけさは至極の時間

  南より吹き入る風の湿り気を帯びたる風は人を弱らす

長男は、夏の須坂で生まれたのだが、あの日も暑い日だった。

  素足にて歩けば床の絨毯の湿り感ずる子の誕生日

  あの日から三十一年あれこれとありしが楽しき日々も重ね来