青天、しかし寒い。
奥泉光『虚傳集』読了。偽書の歴史小説集。著者初の短編集らしい。これが大方、嘘ばかりであろうが、どこか本当っぽく、奥泉が創ったであろう、あれこれの偽書を用いて、本当らしく書かれている。この書は本物であろうかと思って、辞書を引いても出てこない。偽書なのだ。本物らしく歴史の中に埋め込んで卓抜である。最後の「桂跳ね」には、いかにも本物らしい辞世の歌が出てくる。
君がため馬駆りて越ゆ桂川 野路の草葉の露と散るとも
三島由紀夫の辞世のような下手さが、いかにもという感じだ。どこかおもしろく、たのしい書物である。
大山にも彼方丹沢連山にも谷筋は白、夕べ雪ふる
大山に雪が積もるも今年初めでたきものよ手を合はせをり
今年最低の寒き日にして大山もわづかに雪の降り積もりけむ
『論語』衞靈公一七 孔子曰く、「群居して終日、言 義に及ばず、好んで小慧を行なふ。難いかな。」
一日中集まっていて、話が道義のことには及ばず、好んで猿知恵をひけらかすというのでは、困ったものだね。
いや、まったくだ。
群居して終日道義に及ばずに猿知恵ひけらかす困ったものだ
『古事記歌謡』蓮田善明訳 五四 仁徳天皇
天皇は、クロヒメを恋しく思い、淡路島見物と皇后を欺いて行幸した時に、淡路島から、はるばると展望して歌った。
おしてるや 難波の崎よ 難波の崎より船出して
出で立ちて わが国見れば はるかに国を見渡せば
淡島 淤能碁呂島 島が見えるよ波の上
檳榔の 島も見ゆ おのごろ島や淡島や
佐気都島見ゆ あじまさ島にさけつ島
淡路島から吉備の国に行幸した。
皇后には淡路行幸と偽りてクロヒメに会ひに吉備へと赴く