朝は曇っていて寒いけれど、晴れて温度も上がってくるらしい。
湯河原の旅の記念に短歌をまとめました。前のものと重なりますが、お読みください。
湯に沈む
湯河原の源泉掛け流しの湯に浸かりしばしは夢に游ぶわれなり
紅葉にはいまだ早くて宿の窓風に吹かれて青き竹藪
竹藪を目路にたどれば青き空狭き空間にひしめく白雲
鉄塔の建ちたるあたりに湯気ゆらめく源泉ここに涌き出すらしき
草藪にもかすかに湯気のけむりありここからも涌きだす湯がありにけり
浴槽よりこぼるる湯量をおもひをりこの湯に浸かるわれの体積
病みて後かくも衰へしわれなるか大腿骨に筋肉あらず
朝の湯は誰一人なくわれのみにつぎつぎにしたたる湯の輪みてをり
あしがりの川の激湍の音を聞き頤まで沈むこよひたのしき
湯船にはわが仲間たちの喋りごゑたのしきものよあしがりの湯は
湯河原温泉敷島館からタクシーに下りくる町は常と変らず
湯河原駅の土産物屋に温泉饅頭一泊旅の証しとせむか
『論語』子路六 孔子曰く、「其の身正しければ、令せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖も従はず。」
孔子先生のおっしゃることのもっともなり身正しからざれば民従はず
『春秋の花』 夏目漱石
・星月夜の光に映る物凄い影から判断すると古松らしい其木と、突然一方に聞こえ出した奔湍の音とが、久しく都会の中を出なかった津田の心に不時の一転化を与へた。彼は忘れた記憶を思ひ出した時のやうな気分になった。
『明暗』の末尾近くの断章。視覚(星月夜、樹木)と聴覚(水流音)とに半々にかかわる描写。それが東京から湯治場への途上の津田由雄に関する情景相伴った卓抜な表現になっている。
*凩や海に夕日を吹き落とす
古松を吹きすさぶ音と激湍の流れの音の不穏なり