曇り。水無月祓である。
米澤穂信『インシテミル』は、なんとも不思議な、そして定番のミステリイであった。ようやく読み終えることができた。解説を除いて513ページある。
昨夜降る雨に下垂るあけぼの杉葉々しほらしく幽霊のごと
幽霊の手を下げるさま真似たるかあけぼの杉の萎れたるさま
皐月つつじさんざんに枝刈られたり葉のなきところすかすかの枝
『論語』子罕一二 孔子の疾、病なり。子路は門人を臣たらしむ。病、間なるときに孔子が言った。「長いことだね。由の詐りを行なうや。臣なくして臣ありとする。吾れ誰を欺かむ。天を欺かんか。且つ予れ其の臣の手に死なむよりは、むしろお前たちの手で死にたいものだ。立派な葬式はしてもらえなくとも、道端でのたれ死になどするものか。」
ひとたびは孔子治りてよからむか子路の詐り孔子を重くす
『正徹物語』178 「人妻を憑む恋」とは、他人の妻に懸想することである。源氏物語の空蟬・浮舟などが題材としてよいであろう。
・身をうぢと憑み木幡の山こえて白浪の名を契りにぞかる 草根集4543
と詠んだ。
宇治に潜むをみなのもとへ木幡山越えてゆきけり恋ほし恋ほしき
『百首でよむ「源氏物語」』第四帖 夕顔
・心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花 夕顔
・寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔 光源氏
夕顔をとり殺してしまった物の怪、六条御息所だろうか。
・過ぎにしもけふ別るるも二道に行くかた知らぬ秋の暮れかな 光源氏
空蟬は、夫に従い伊予に下ろうとしているし、夕顔は死なせてしまった。
死なせたる夕顔おもひわが手より離れし空蟬をおもふ秋なり