朝から天気がいい。暑いほどに気温が上がっている。
『新編同時代の作家たち』広津和郎作・紅野敏郎編(岩波文庫)を読む。大正文壇の様子がいきいきと、そして興味ぶかく記される。宇野浩二、そして芥川龍之介の自死、島村抱月の頼りなさ、他、田山花袋・菊池寛・大杉栄・葛西善三・相馬泰三・牧野信一・小出楢繁・直木三十五・三上於莵吉・正宗白鳥・志賀直哉が取り上げられる。いずれも、それぞれの文人の奇知を捉えて極めて面白い。
夏の影は濃くして妻の前にある影ふむやうに妻が出かける
あけぼの杉の影も西側に伸びてゐるその影の中妻が通過す
木が違ふ木を拝みて違ふこと気ちがひならむわれに狂あり
『論語』泰伯一四 孔子が言う。「其の位に在らざれば、其の政を謀らず。」
意外なほどに謙虚な孔子である。
その位にあらざれば政務に謀らず孔子言ふこの謙虚さは孔子のものなり
『正徹物語』159 「祈る恋」の題では、どの神でも詠んでいい。「年もへぬいのるちぎりは初瀬山(をのへの鐘のよその夕暮・新古今1142)」と定家も詠んだので、仏に祈ってもよい。摂政藤原良経の「いく夜われ浪にしほれて貴船川(袖に玉ちる物思ふらむ・新古今1141)」という和歌は、貴船社には夜参するので「いく夜われ」と詠んだ。
長谷寺の観音像に祈りたり鐘うつときをその時と決め
『伊勢物語』百九段 大切な人を亡くした友へ、男が詠んだ。
・花よりも人こそあだになりにけれいづれをさきに恋ひむとか見し
さくら花散るときを死ぬる人やある人こそ恋ふる花よりもなほ