今日は曇りが続くらしいが、時折晴れた空が覘き暑い。
一刷毛の雲の真下の影に入る少し涼しきさつき花咲く
朝と夕、そして寝る前それぞれに薬剤のむも病状かはらず
口に含む一錠一錠を喉に流す薬に寄りて溶け方ちがふ
『論語』泰伯一 今日から泰伯第八に入る。
孔子が言う。泰伯(周の文王の父季歴の兄。自分の方に位を伝えたいのだと見て取り、国を棄て、南方、呉へ亡命した)は至徳と謂うべきのみ。三度も天下を譲ったことになるが、人民はそれを讃えることさえできなかった。
人に知られることなく王位を譲ったのが泰伯である。
泰伯の至徳を思ふ。知られずに王位を譲ること三度なり
『正徹物語』146 新羅明神の歌は、『続古今』に入っている。
・から船にのり尋ねにとこしかひありけるものをここのとまりに 続古今691
弘法大師、
・法性のむろ戸ときけど我すめば有為の浪かぜたたぬ日ぞなき 新勅撰574
という御詠歌は『新勅撰』に入っている。このように神明仏陀も歌をたしなまれた。歌は深い秘密を有するものなのであろう。
新羅明神も弘法大師も和歌を成す歌とは神秘を底に秘めたり
『伊勢物語』九十六段 長年、女を口説き続けていた男がいた。女の心も木石ではなかったので、男を不憫に思った。女は、男に心を開いていった。ころは水無月泣かば。
女は、男に言ってよこした。「今はあなただけを思っています。ただ、できものが一つ、二つ出てしまった。暑い時期でもある。秋風が立ちはじめた頃、必ず逢いましょう。」時は経ち、「あの女は、男のもとへ行こうとしているらしい」とあちこちで噂がたった。噂がけちをつけた。女の兄が噂を聞き、男に女を渡すまいと、突然迎えにきた。女は、黄葉したかえでを女房に拾わせ、歌を書きつけた。
・秋かけていひしながらもあらなくに木の葉ふりしくえにこそありけれ
女は,書置きを、「あの人が使者をよこしたなら、渡してくれ」といって去った。その後、女がどうなったのかは、今日までわからない。幸せに暮らしたのかどうか誰も知らない。男は、まじないの柏手を打ち、呪っているということだ。「むくつけきこと。」人が誰かを呪うとき、果たして相手の身にふりかかってくるのかこないのか。それは誰にもわからないが、男は「今こそは見め」と言っているそうだ。
男も女も未練がましくふるまへば男の呪ひもかなふべきなり