曇り、のち晴れといっていたが、なかなか晴れない。
夜目に見ゆ廊下の影の大きくて立ち竦みをり寸時の怖れ
わが影と思へぬ大き影がみゆ天上灯火近々光る
闇の中へ消えゆくごとしわが影に従ひ歩むこのドアの前
『論語』述而二八 互郷の村人はまともに話がしにくい。そこの童子に孔子は会ったので、門人がいぶかった。孔子が言うには、やってきたことを買う。去ってゆくのは賛成しない。あの子どものことをいぶかるとは、ひど過ぎる。人がその身を清くしてやってくれば、その清さをかう。帰ってからのことは保証しない。
互郷の人は与にしがたしさあれども童子には会ふ孔子に余裕あり
『正徹物語』136 「鵙の草ぐき」は、「住む所を忘るる恋」にも「途中に契る恋」にも通用する。「媒を憑む恋」も難題である。
わが目には鵙の草ぐさに見えざるにたしかに恋のありかと思ふ
『伊勢物語』八十六段 年若い男が、同じ年若い女と情をかわしあっていた。たがいにまだ親がかりだったので、遠慮して関係を絶った。幾年かたち、男が女へ歌を送った。
・今までに忘れぬ人は世にもあらじおのがさまざま年の経ぬれば
男は、昔の思いをとげようと思ったのだろうか。
うーん、難しい問題です。年が経っていることを考えれば、女はすでに嫁いでしまったとも思える。相手も独り身なれば、昔を思い出すこともあるだろうし。
年経ても思ひはとどけ幼き日別れし彼の人を恋ふなり