2024年5月12日(日)

曇りだ。雲の中に青い部分があるものの、次第に雲が多くなり、やがて雨らしい。

  姫紫苑むらがり咲けるところあり白きが揺れて姫御殿かも

  姫御殿に舞ひあがりたる姫紫苑この白き花芯また赤し

  背たかき姫紫苑の花ひんじゃくにわが目に映る日々の道行

『論語』述而二五 孔子が言った。「聖人には会うことはできないが、君子に会えあればそれで結構だ。善人には会うことはできないが、常の人に会えればそれで結構だ。無いのに有るように見せ、からっぽなのに満ちているように見せ、困っているのに平気なようでは、むつかしいね、常のあることは。」

  常のあることの難さを孔子言ふ常ある人はさうはゐませず

『正徹物語』133 ある所の歌会で「祈る恋」という題で、
・思ひねの枕の塵のまじらはばあゆみをはこぶ神やなからん 草根集4408

「あゆみをはこぶ」と表現したのが。わざわざ足を運んで祈るような面影があってよい。その翌日、畠山義忠の歌会で、また「祈る恋」の題を取ったので、「この歌をもって替えよう」と思いましたが、力不足かなと思い、
・そのかみのめ神を神の道あらば恋に御禊を神や請けまし 招月庵詠歌172

と詠んだ。六月の御禊などといい、御禊があちこちであるので、恋の題で御祓を詠んだのである。

  神がみに祈る恋とは難儀なり諾冊二尊をうたひたるかな

『伊勢物語』八十三段 惟喬親王は、水無瀬離宮にかよっていた。いつものように馬頭の翁がつかえていた。数日後、親王はみやこの邸に帰った。馬頭は、見送ってすぐ立ち去ろうとしていたが、親王は馬頭を放さない。酒や褒美をくだされようとする。馬頭は、帰ろうと気がせいて、
・枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくに

と詠んだ。時は、三月の末。けれど結局ひきとめられた翁は、親王とともに夜をあかした。馬頭と新王は親しんだ。けれど、思いがけず親王は髪をおろし出家した。正月の挨拶に、親王がひっそり住まう小野へ、馬頭は詣でた。小野は比叡山の西の麓。雪が深く積もっていた。その雪をふみわけふみわけ庵室へたどりついた。親王は寂しい様子だった。馬頭は帰りがたく、そばに昔の華やかだったころや思い出を語りあった。このまま親王のもとにとどまりたいと馬頭は思ったものの、都に公用がある。日は暮れようしていた。
・忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪ふみわけて君を見むとは

こう詠んで、馬頭は泣く泣く帰った。

  惟喬親王に親しむ業平のものがたり離れがたきに歌を詠むなり

偏屈房主人
もともと偏屈ではありましたが、年を取るにつれていっそう偏屈の度が増したようで、新聞をひらいては腹を立て、テレビニュースを観ては憮然とし、スマートフォンのネットニュースにあきれかえる。だからといって何をするでもなくひとりぶつぶつ言うだけなのですが、これではただの偏屈じじいではないか。このコロナ禍時代にすることはないかと考えていたところ、まあ高邁なことができるわけもない。私には短歌しかなかったことにいまさらながら気づき、日付をもった短歌を作ってはどうだろうかと思いつきました。しばらくは二週間に一度くらいのペースで公開していこうと思っています。お読みいただければ幸い。お笑いくださればまたいっそうの喜びです。 2021年きさらぎ吉日

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