今日は晴れて、暖かい。どころか暑い。
むらさきの花が道路の割れ目からはみ出して咲くたのしからむや
歩く先につぎつぎにあるむらさき草色濃きさねさしさがむは
灯したるあかりのごとき西洋たんぽぽその濃き黄色いのちある如
『論語』述而四 「子之燕居、申申如たり、夭夭如たり。夭如也」孔子先生のくつろぎの様子は、のびやかであり、にこやかである。
孔子のくつろぎの様をたとふれば申申如たり夭夭如たり
『正徹物語』113 「染めばぞうすき色を恨みん」とは、逢はざる心なり。逢ひてこそうすき色をも恨みめとなり。
・人心一はな衣ひとたびも染めばぞうすき色を恨みん
きみ去なばうすきぞ色もさくら花逢ひ見ることもかなはざりしか
『伊勢物語』六十三段 年を重ねても、恋することをあきらめられない女がいた。どこかにいい男がいないかと思っていたが、口にだすことは、憚られた。女は夢を借りて、恋をのぞんでいることを、息子たちに訴えた。上の二人はとりあわなかったが、三男は、「それはよい夢見です。きっといい男があらわれる」と言った。女は気を良くする。
三男は思った。どうにかして在原業平に母を会わせてやれないかと考えた。他の男ではだめだ。業平ならば。
業平が狩をしているところに三男は行きあう。三男は業平の馬の手綱の口をとり、引きとどめた。「母のためにどうか」三男が乞うと、業平は不憫に思い、女と寝た。業平は、それだけで女を訪れることはなかった。
女は、業平の家へゆき、そっと覗きみた。業平は女の気配を感じて、詠んだ。
・百年を一年たらぬつくも髪われを恋ふらし面影に見ゆ
業平は、女の家を訪ねようとしているのではないか。女は、家に走って帰った。道々、茨やからたちの棘にからまったが、ひたすら走った。帰り着くと、男を待った。業平は、女がしたのと同様、こっそり覗いた。女は、溜息をつき、詠んだ。
・さむしろに衣かたしき今宵もや恋しき人に逢はでのみ寝む
なんと不憫な。その夜ふたたび女と寝た。世の中の例として、思ふをば思ひ、思はねば思はぬものを、この人は、思ふをも、思はぬをも、けぢめ見せぬ心なむありける。
業平のまめごころこそ貴きなり思ふ思はぬのけぢめなかりき