朝から晴れ、ヒヨドリが鳴き、スズメが桜の木に拠り、春らしい日和である。
一輪、二輪咲けるばかりの枝にきて枝を揺すれる子すずめ三羽
さてもさても番になるかひよどりのむくつけき二羽前後して飛ぶ
人の世のあかるく開く朝の庭ひよどりがきて愛の宣言
『論語』雍也一七 孔子が言った。だれでも出てゆくのに戸口を通らなくてよいものはない。どうしてこの道を通るものがないのだろうか。
戸口を通らずにこの道を往くものはなし必ず通るはずの戸口を
『正徹物語』96 読師の対面の座は、主位といい主催者など重んずべき人の坐る座である。文台の上は、主上の座。読師の後ろが一等下座である。読師講師の傍らにはその他の人々が、ぎっしり取り囲むように座る。
歌会の座にもきまりがあるものを窮屈なれど従ふべしや
なんだかうるさいね。決まりなど誰がこしらえたのかなあ。
『伊勢物語』四十六段 男は、心のまっすぐな友をもっていた。片時も離れず、信頼しあっていたが、友は他国へ行くことになった。寂しい思いのまま別れた。月日を経て、友が男に文をよこした。
あれから、驚くほど月日がたってしまいました。私のことをあなたは忘れてしまったのではないかと、思い悩んでいます。世の中の人々は、会わなくなれば忘れてしまう。
そう書いてあったから、男は詠んだ。
・目離るとも思ほえなくに忘らるる時しなければ面影に立つ
面影に立つものをこそ友といふかくうつくしき友情あらむ