いい感じに朝が明けてくる。橙色に群青色の空が浸潤されてゆく。そして日の出だが冷えているし、北風も強い。
一巻の絵巻のごとき人生を夢に観ずるに現実違へど
神棚の榊に粒実ひそかなり春の精霊ただよふごとし
たましひに紙やすり掛けて削るごと違和感ありきけさの体調
『論語』公冶長一〇 宰予、昼寝ぬ。孔子が言う。「くさった木には彫刻できない。ごみ土の垣根には上塗りできない。叱ってもしかたがない。」孔子がまた言った。「前に私は人に対するに、ことばを聞いてそれで行いまで信用した。今はことばを聞いて、さらに行いまで観察する。宰予のことで、こう改めたのだ。」
だらしなき宰予のさまにことばのみか行ひを観る判断のために
『正徹物語』62 「夕づくよ小倉の山に鳴く鹿のこゑのうちにや秋はくるらむ(古今312貫之)」は昔から疑問とする歌だ。詞書(なが月のつごもりの日大堰にてよめる)から九月尽の歌であることがわかる。「夕づく夜」は四日、五日の頃。どうしてか。万葉集に色々ある。「夕月夜」は夕から月の出る頃をいう。また「夕付夜」は、月ではなく、ただ夕方から次第に暗くなり夜になる時間帯を「ゆふづくよ」という。古今集の歌もこれで、「夕付夜小倉の山」と詠んだのである。
ひらがなに「ゆふづくよ」とあれば分かり難し「夕付夜」なり貫之の歌
『伊勢物語』十二段 昔男、人の娘を盗んで、武蔵野へつれてきて国の守につかまった。草むらに女を隠し逃げた。女は焼かれそうになって、こんな歌を詠んだ。
・武蔵野は今日はな焼きそ若草のつまもこもれりわれもこもれり
女も男もつかまった。