まあまあいい天気である。
薬剤を服用せむと水を汲む浄水にして良き水を汲む
一服にああこの世界にわれ在るをたしかめてゐる水の冷たさ
この世から他界へつながる坂上る出雲(いづも)国(のくに)の伊賦(いふ)夜坂(やのさか)を
中上健次『千年の愉楽』を読む。やっぱり中上健次はいい。オリュウノオバ、路地の産婆だが、その目から見た「中本の一統」の血、暴力と早死の系譜が小説の内容だ。文章がいい。露地と他界が混在したかのような祈りが、お経のような文体で綴られる。半蔵、三好、文彦、オリエントの康、新一郎、達夫と早世の顛末が語られる。
生に重きオリュウノオバに語られて路地の物語よし中本の血よし
『老子』下篇76「強大なるは下(しも)に処(お)り、柔弱なるは上(かみ)に処る。」
『徒然草』183段
人觝(つ)く牛、人喰ふ馬、人喰ふ犬いづれも咎あり律のいましめ