志賀直哉『暗夜行路』を読んだ。学生時代に一度読んでいるが、最後の大山の場面しか覚えていないから、まったく新鮮な気持ちで読めた。主人公、時任謙作は、日本の近代小説特有のダメ男といっていいだろう。もっとしっかりせいよ、と声をかけたくなる。しかし、それこそが「『実存』のうめき」(尾崎一雄)なのだろう。大山での回心はやはり圧倒的なものである。一度読んでいるわりには、けっこう時間を要したが、よき読書でありました。
暗夜行路をためらひ身勝手に生きてゐる時任謙作の苦悩のうめき
大山の夜のたましひにふれたるか生死のさかひをさまよひたるは