ちくま日本文学『岡本かの子』を読みきった。「老妓抄」や「家霊」は、以前読んでいたが、「金魚繚乱」をはじめ未読のものが多く、楽しい読書であった。中では「河明り」「雛妓」、「みちのく」などが良かった。執拗なまでの形容、比喩を重ねた妙にねちっこい文体ながら、心地よい文章の流れがあり、岡本かの子がただものではないことを、あらためて認知した。
年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり かの子
人類の滅ぶる朝も木蘭は白き花着け陽を浴びてゐむ
秋田の伯母、父の姉の死が伝えられた。97歳。
みちのくの春に先だち九十路七つの伯母の逝きたまひけり