野口冨士男『風のない日々/少女』読了。
二・二六事件の前年、社会が暗くなってゆく時代の市井の夫婦のすれ違いを淡々とした筆致で綴り、妻殺しに至る日々を丁寧に描いた「風のない日々」。戦後の混乱の時期、誘拐した十二歳の少女との逃避行と心の通い合いを話題にした野口の小説としては珍しいもので、この二作、いやあよかった。
薄雲の流るるやうに掛かりたる晩秋の空はるかなるかも
一晩のふとんのぬくみを抜けがたく老いぼれたればぐずぐずとゐる
野口冨士男『風のない日々/少女』読了。
二・二六事件の前年、社会が暗くなってゆく時代の市井の夫婦のすれ違いを淡々とした筆致で綴り、妻殺しに至る日々を丁寧に描いた「風のない日々」。戦後の混乱の時期、誘拐した十二歳の少女との逃避行と心の通い合いを話題にした野口の小説としては珍しいもので、この二作、いやあよかった。
薄雲の流るるやうに掛かりたる晩秋の空はるかなるかも
一晩のふとんのぬくみを抜けがたく老いぼれたればぐずぐずとゐる