今日も寒いが晴れている。
内海健『金閣を焼かねばならぬ 林養賢と三島由紀夫』を読む。著者は、私より一つ上の精神科医である。それゆえに今で言えば「統合失調症」が「分裂症」として中心的に論じられる。金閣を実際に焼いた林養賢と、それを溝口に仮託して『金閣寺』を書いた三島由紀夫。「金閣をやかねばならぬ」という衝動を描いて両者を重ね合わせる。圧倒的な精神医としての見解、その迫力は、読者の亢ぶりは際限ない。よい読書であった。
金閣が燃やされたのも当然と思ひし中学生われが居たりき
わたくしもどこか偏頗な思ひありて金閣を燃やす青年を肯ふ
あたらしくなりたる金閣を一度見しこの偽物と唾棄したりけり
『論語』衞靈公一一 顔淵、邦を為めんことを問ふ。孔子曰く、「夏の時を行ないひ、殷の輅に乗り、周の冕を服し、楽は則ち韶舞し、鄭声を放ちて佞人を遠ざけよ。鄭声は淫に、佞人は殆ふし。」
夏の暦―季節の春のはじめとして農事に便利。殷の輅の車―木製で質素堅牢。周の冕の冠―上に板がついて前後にふさのたれた冠。儀礼用として立派。音楽は舜の韶の舞い。鄭の音曲をやめ口上手なものを退ける。鄭の音曲は淫ら、佞人は危険だ。
邦を治めるには夏の暦、殷の輅の車、冕の冠、音楽は舜の韶舞を
『古事記歌謡』蓮田善明訳 四八 吉野の国栖人ら
吉野の国栖人らが、オホササギノ命の佩いている刀を見て歌う。
品陀の 日の御子大雀 品陀の日の御子大雀
大雀 佩かせる大刀 大雀命の佩き給う
本剣 末振ゆ 諸刃の剣の切先は
冬木如す 枯らが下樹の たとえば葉もない冬の木に 霜の真白く凍るよう
さやさや きらきらきらり冴えている
品陀の日の御子大雀佩かせる太刀のきらきらきらりかがやいてゐ