朝からずっと曇りが続くらしい。
深町秋生『鬼哭の銃弾』(双葉文庫)を読む。「スーパーいちまつ強盗殺人事件」を追う、退職刑事の父と現役刑事の息子の葛藤が凄いし、顛末も凄い。
礼をするごとくに繁るあけぼの杉雨降ればしとど濡れそほちつつ
雨に濡れしたたる葉むら下がりをりあけぼの杉のみどり増しつつ
湿り気にかすかな小田急小田原線橋梁わたる音も湿りて
『論語』子罕二七 孔子が言う。「敝れたる縕袍を衣、狐貉を衣たる者と立ちて恥ぢざる者は、其れ由(子路)なるか。」
破れたる縕袍を着て毛皮着る者とし立てど由は恥ぢざる
『正徹物語』195 「煙に寄する恋」という題で、このように詠んだ。
・立つとてもかひなし室の八嶋もる神だにしらぬむねの煙は 草根集4643
「室の八嶋洩る」から「護る神」へさっと変化させる箇所で、斬新なものになった。しかしこれも一回限りで「室の八嶋もる」という句を、二度とは詠むまいと肝に銘ずべきである。少し昔には「池にすむをし明けがた」「露のぬきよはの山かぜ」といった句は、二度真似て詠んでは名折れと思ったものだ。
煙たつ室の八嶋をもる神もしらぬ恋するわれならなくに
『百首でよむ「源氏物語」』第二十一帖
葵の上と光源氏のあいだに生れた夕霧の元服、六位に任ず。
・紅の涙に深き袖の色を浅緑にや言ひしをるべき 夕霧
官位に満足はしていません。
源氏は新しき邸を新築した。
・心から春待つ園はわが宿の紅葉を風のつてにだに見よ 秋好中宮
春待つも秋待つもともに風にのりけはひ伝へ来るを待つのみ