朝は割合涼しかった。次第に気温は上がっている。
わが家を守るヤモリの出現にへっと驚くその小ささに
あけぼの杉も夜の雨に濡れその重さ濃きみどり葉の下垂れてゐる
夏つばきの花もすつかり散り落ちて苔に横たふ茶に犯されて
『論語』泰伯一九 孔子が言う。「大なるかな、堯の君たるや。堂々として天だけが偉大である。堯は、それを見ならわれた。蕩蕩として民能く名づくること無し。堂々として立派な業績をうちたてた。そして輝かしくも礼楽制度を定められた。」
いにしへの堯の業績を絶賛すこの政治この礼楽尊きものを
『正徹物語』164 「虎の生けはぎ」ということが、新撰六帖題和歌に見えている。作者の為家が大納言であったところ、さらに子の為氏が大納言に任じられようとして、この官職に欠員があれば任ずるがいまは無いので無理だという。そこで父為家を辞退させて前大納言とし、為氏が大納言に任じられた。このとき為家は自らの感慨を述べて、「虎の生けはぎ」と詠んだのである。
「生けはぎ」には無理やり官職を奪う意もあり。
為氏が大納言職を奪ひたり虎の生けはぎやましきならむ
『伊勢物語』百十四段 仁和の帝が芹川に行幸したとき、お供をした男がいた。男は以前、大鷹の鷹飼いだったのだが、今はもう若くはない。役からも退いている。けれど帝は、男をお供としたのだった。男は、自分の着ていた模様摺りの狩衣のたもとに、歌を書きつけた。
・翁さび人なとがめそ狩衣今日ばかりとぞ鶴も鳴くなる
ところが、帝はこの歌を聞き、機嫌を悪くしてしまったという。男が自分のこととして詠んだのに、若くない帝は、「翁さび」をあてつけととってしまった。
翁さびはわがことならむすこしばかり若からぬ帝の勘違ひなり