朝から曇っているが、やがて晴天になるらしい。
と揺りかう揺り揺りゆられわが身も心も揺りゆられ
遊びをせむとや戯れせんとや生れたるに四角四面のこの世に停まる
このうるはしき今様うたふ遊女たち小舟に乗りて揺られうたへる
『論語』泰伯一六 孔子の言。「狂にして直ならず、侗(頭の中がからっぽ)にして愿(誠実)ならず、悾悾(おろか)にして信ならず。吾れはこれを知らず。」
狂にして直、侗にして愿、悾々にして信ならずではどうしやうもない
『正徹物語』161
・折ふしよ鵙なく秋も冬枯れし遠きはじ原紅葉だになし
これは「おもふともよもしらじ」をかくした沓冠の折句の歌だ。これはさっと詠めた。どんなに詠もうとしても、詠めない時もある。らりるれろは特に詠めない。天暦(村上天皇の治世)に女御・更衣など多くの方々へ、
・逢坂もはては往来の関もゐず尋ねて問ひこきなばかへさじ
と、詠まれて差し上げたところ、皆真意を理解しないので、ある女御で「尋ねて問ひこ」とあったので、「参上せよ」という歌であると勘違いして、その夜天皇のもとへ押しかけた人もいたし、また理解できませんという旨の返歌をした女御もいた。その中でただ一人、広幡の更衣という人から、薫物を進上されたのを、結構だとお思いになった。「あはせたきものすこし」という沓冠の歌であったのである。
沓冠の難しさただならず広幡の更衣ひとりのみ解く
『伊勢物語』百十一段 高貴な女へ歌を詠んだ男がいた。ちょうど女房の一人が亡くなったところだった。それにかこつけて、女房を弔うふりで、女自身に詠んだ。
・いにしへはありもやしけむいまぞ知るまだ見ぬ人を恋ふるものとは
女は返した。
・下紐のしるしとするも解けなくに語るがごとは恋ひずぞあるべき
すると男はまた返した。
・恋しとはさらにも言はじ下紐の解けむを人はそれと知らなむ
う~ん、男の歌が最後だから、女の気持ちをくつがえせたのだろうか。どうも女の歌の方がよくはないか。
女房の一人が亡くなるときにしも恋歌のごときはもつてのほかなり