曇りで、寒いけれど、桜はほぼ満開である。
花冷えやさくら木のした春物のコートのボタンきっちり留むる
さくら木の枝にすずめを集らせて蜜吸はせをりこの春寒に
花も葉も共に出づるは山桜白き花よしまだ蕾ある
『論語』雍也二一 孔子が言う「中以上の人には上のことを話してもよいが、中以下の人には上のことは話せない。何のことかと思うと註があって、人を教えるには相手の能力によらねばならないということらしい。差別があるかのようで、そうではあろうが、あまり感心できないのだが。
人にして能力の違ひあるものの孔士の言は納得しがたし
『正徹物語』100 「名所の春の曙」という題で、次のように詠んだ。
・明けにけりあらましかばの春の花なぎさにかすむ志賀の山もと 草根集2874
これも「あらましかば」といひたるが面白き体なり。曙の霞わたれる志賀の山元に花が咲き乱れてあらば、いかに面白からまし…「なぎさにかすむ」は、今は花が「無き」を掛けている。「なぎさ」に「無き」を掛けている
あらましかばさくらの花の咲き満ちよ霞わたれる琵琶湖の岸に
『伊勢物語』五十段 男が、うらみごとを言ってくる女を、のろわしく思い、
・鳥の子を十づつ十は重ぬとも思はぬ人を思ふものかな
と詠んだ。すると女はこう詠む。
・朝露は消えのこりてもありぬべし誰かこの世を頼みはつべき
男は、また返す。
・吹く、風に去年の桜は散らずともあな頼みがたき人の心は
女は、また返した。
・行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり
男は、更に返す。
・行く水と過ぐる齢と散る花といづれ待ててふことを聞くらむ
互いの浮気を言い合う男と女。どうせ、ひそかに別々の相手と遊んでいた時のやりとりに違いない。
まあ、どっちもどっちというところでしょうか。
うらみごとを言ひし女と幾たびも歌のやりとりどっちもどっち