曇り後雨らしい。ただ気温はある。
空豆を殻からとり出し笊に入れ少し水浴ぶ豆踊りあり
豆に刃を入れて残酷なるたのしみあり犯されてゐる豆に同化す
もういやだ背後を襲ふこの刃空豆のいのちを御する
『論語』述而三 孔子が言う。「徳を脩めざる、学の講ぜざる、義を聞きて徒る能はざる、不善の改むる能はず、是れ吾が憂ひなり。」
孔子は嘆く徳、学、義、不善いかようにもならず是吾が憂ひ
『正徹物語』111 「朝の霜」の題に、こんな歌を詠んだ。
・草の原誰に問ふともこの頃や朝霜置きて枯るとこたへん 草根集4172
「草の原誰に問ふ」は、本歌を取った。
・たづぬべき草の原さへ霜がれて誰に問はまし道芝の露 狭衣物語四巻
と『狭衣物語』にある。また『源氏物語』には「(うき身世にやがて消えなば尋ねても)草の原をば問はじとや思ふ」(『源氏物語』花宴・朧月夜が詠んだ)と詠めり。またその後、『新古今和歌集』で俊成女が、
・霜がれはそことも見えず草の原たれに問はまし秋の名残を 新古今617
このように「草の原」には皆「問ふ」ということを詠んでいる。そしてこれらは皆、「問はまし」と言っているのを、私は「誰に問ふとも」と引き替えたのだ。
草の原いかがと問へばそこにこそ消えてうつくし秋の名残
『伊勢物語』六十一段 男が筑紫まで行ったとき、簾の内の女が「この男は、色好みだと噂されているのよ」と他の女に言っているを聞いた。男は詠む。
・染川を渡らむ人のいかでかは色になるてふことのなからん
と詠み、女は返した。
・名にし負はばあだにぞあるべきたはれ島波のぬれ衣着るといふなり
これは、女の勝でしょうか。
色好みの噂どほりの男なりあだぞあるべき濡れぎぬならむか