うっすらと雲が覆い、寒い。
風のない冬の日の午後にほひくる柊の白き花の香ありき
どことなく上品なる香り婦人にはよく似合ひたる白き花咲き
ひかへめな婦人のごとき柊の匂ひありけりきよき芳香
『論語』憲問四 孔子曰く「邦に道あれば、言を危しくし行を危しくす。邦に道なければ、行を危しくして言は孫う。」
邦に道あるか道なきかそれぞれに進むはげしさもある
『春秋の花』 平福百穂
・江の川の川波の渦はゆき流るつきせぬ歎きに父母はまさむ 『寒竹』(1927)所収。
かつて作者が入院した際の付き添い看護婦―彼女の故郷が「江の川」のほとり―にたいする挽歌である。
・ゆゆしくも見ゆる霧かも倒に相馬が嶽ゆ揺りおろし来ぬ 長塚節
*
・足袋刺してみとり女ひとりしづかなり土鍋の重湯はや煮ゆる音
ダム湖より中津川ほそくながれくる多く沈みし宮ケ瀬の村