よく晴れている。
橋川文三『三島由紀夫』(中公文庫版)を読む。生前、三島をもっとも知る人物と考えられていて、そうした文章がまとめられている。もちろんその死にもふれている。おもしろかった。
ふだらくの海をただよふ桴舟そのゆくすえは見定めがたし
那智の滝の落下するさま凛冽としたればこころ直しくならむ
補陀落に渡らむとする心情をどこかで納得してゐるわれか
『論語』子路一九 樊地、仁を問ふ。孔子曰く、「居所は恭に、事を執りて敬に、人に与りて忠なること、夷狄に之くと雖ども、棄つべからざるなり。」
「仁」を問へば恭、敬、忠、夷狄にゆくとも棄つべからざるなり
『春秋の花』 徳田秋聲
「お増は側に立膝しながら、巻莨をふかしてゐた。睫毛の長い、疲れたやうな目が、充血してゐた。露出した男の膝を抓ったり、莨の火をおっつけたりなどした。男は吃驚して跳ねあがった。」『爛』(1913)の「一」の結末部。「愛欲描写の技巧神に入り、簡潔細緻を究む。」
・折々は妻のうとまし冬籠り
秋聲の小説を読むそれぞれのカップルの妙描写されたり