快晴。いわゆる三島由紀夫事件から五十四年。ずいぶん経ったものだ。
三島由紀夫が自決して五十四年経つわれはなにもの
なにものでもない老いが三島・森田を忘れ得ずこの青天に感傷すべし
部屋中に飾りてありし花束も三島・森田を弔ひて咲く
『論語』子路一七 子夏、莒父の宰と為りて、政を問ふ。孔子曰く「速かならむと欲すること母れ。小利を見ること母かれ。速かならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば則ち大事成らず。」
孔子曰く宰となりても成果、小利を欲するな問ひ欲すれば何事もかなはず
『春秋の花』 伊藤佐千夫
・おり立ちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く 伊藤佐千夫
『左千夫歌集』(1920)所収。一九一二年(大正元年)発表連作絶唱「ほろびの光」
五首の名高い第一首。第五首は、これも名高い
・今朝の朝の露ひやびやと秋草やすべて幽けき寂滅の光
一九一二年は左千夫逝去の前年に当たるから、「ほろびの光」という表現は、あるいは彼自身の死の予感であったのかもしれない。斎藤茂吉が、「左千夫生涯の歌の頂点に位するものの一つ」などと絶賛するのも、まこと「うべなるかな」である。
・かぎりなく哀しきこころ黙し居て息たぎつかもゆるる黒髪
伊藤佐千夫に滅びむとする予感ありその作る歌まことうべなり