珍しく晴れた。やがて曇ってくるらしいが。
点滴棒を立てて看護師したがへて水戸黄門か髭をなでつつ
病廊を歩く稽古の始まりぬ行って反ってまた行きて来る
今朝もなかなか微熱が去らぬ病室のベッドに暮す一日なりけり
『論語』顔淵一八 季康子、盗を患へて孔子に問ふ。孔子対へて曰はく、「苟も子の不欲ならば、これを賞すと雖ども窃まざらん。」
季康子は盗を怖るる苟も不欲なりせば懼るるにたらず
『春秋の花』 鏡王女
・秋山の樹の下隠り逝く水のわれこそ益さめ思ほさむよは 『万葉集』巻二所収。
第五句「思ほさむよは」は「御思ひよりは」「思ほすよりは」の訓があるが、私は掲出の訓に愛着する。「聴覚」の鋭敏・澄明を卓抜秀麗な掲出歌から強く感得する。「胡麻化さない写生がある。」
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・神奈備の磐瀬の杜の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋まさる
神奈備の杜ふかくして鳴く声の諸鳥を聴き判別しがたき