2023年9月18日(月)

病院の窓を雲がゆく。   暁烏けさも鳴きつつ移りゆくねぐらより出で田のうへを飛ぶ   あけがらすけさも早くに鳴きだしていづくゆくらむ町めぐりをり   メキシコのアステカ神を写しゆくいつしか魔法にかかりしごとく

2023年9月17日(日)

今日も外は暑いのだろう。   朝がらすたけだけしくも鳴きさわぐ。稲田に垂り穂、風に鳴るとき   黄金の稔り田にしづかに降りてくる来臨を待つ南無阿弥陀仏   雲を吐きジェット機西へ飛びゆけり青空に少なき雲を避けつつ

2023年9月16日(土)

外は暑そうだ。病院内はエアコンが効いている。退院だ。   鷺五羽が鳴きつつ田圃の畔に降りる稲穂稔れるえびなの田へと   ひよどりは速度落して飛びゆけり黄金の田を睥睨しつつ   続々と畔に降下す。稔り深き海老名田圃をおのお...

2023年9月6日(水)

堀田善衛『方丈記私記』を読む。いい本だ。1945年、大空襲の際、そこあったのは「感情の、一種の真空状態」だった。しかし「実は私氏自身の内部において、天皇に生命のすべてをささげて生きる、(略)戦慄をともなった、ある種のさわ...

2023年9月5日(火)

病室は五階の端、窓側である。秋の田が見える。   かろやかに小雲(せううん)ひむがしへ流れゆくこの軽やかさ秋のものなり   穂の垂れて刈りしほ近しこの秋もたけてゆくなり黄金の田に   この日ごろ黄金の田に穂の重く刈りしほ...

2023年9月3日(日)

迢空忌。朝方は涼しいのだが、暑いのに変わりはない。   紙(し)垂(で)四枚垂らして神棚あでやかなり祈りささげむ地の霊たちに   石上(いそのかみ)ふる鈴振りて、いにしよをひらくがごとき鶏の鳴き声   地の霊など九月一日...