堀田善衛『方丈記私記』を読む。いい本だ。1945年、大空襲の際、そこあったのは「感情の、一種の真空状態」だった。しかし「実は私氏自身の内部において、天皇に生命のすべてをささげて生きる、(略)戦慄をともなった、ある種のさわやかさというものも、同じく私自身の肉体のなかにあった」。長明が生きた時代、「朝廷一家が、あたかも鵺ででもあるかのように、ぬらりくらりと危機を乗り越えて行くものであ」り、まさに「古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。ありとしある人は皆浮雲の思ひをなせり」であった。その他いろいろ。鴨長明は意外に凄いのだ。堀田善衛もまた凄いのだ。
東京の下町を焼く大空襲。長明の『方丈記』あれこれ気になる
古京荒れて新都はいまだ成らざるにひとは浮雲のごときとおもふ
古典とは異なるものの面妖さ『方丈記』読む。つぶさに読める
入院中。しばらくすると歌が消える。休息である。