青天だが寒い。
山の端が薄桃色に明けてくるさがみの国の朝のはじまり
今日はまた冬の空気にもどされて大山山陵くきやかにして
相模川の鴨たち
頭赤き鴨に黄色の鴨それぞれ風に逆らひ遅々たり遡る
いち早くさくら花咲く家の前 表札よめば級友の名
川端康成『千羽鶴』を読む。なかなか奇妙なエロスの香る小説だ。一人の青年をめぐる女性たちのそれぞれの魅力と悪意。志野の茶器を象徴のようにして、いったいヒロインは誰なのか、文体は明朗なのだが、謎めいた魅力がある。いやあ、あらためて川端康成、ただものではない。
艶なるは太田未亡人か茶を喫しエロスの世界にとりこまれたり
志野焼の艶。『千羽鶴』一編に底流しこのエロティックなかなかのもの