秋分の日(むかしの秋季皇霊祭)である。朝から雨がふったりやんだり。涼しいような、まだ暑いような。
衣を裏返して寝ると恋人を夢に見るそうだ。「わぎもこに恋ひて術なみ白妙の袖返ししは夢に見えずや」(万葉集・2812)、小野小町「いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣を返してぞ着る」(古今集・554)、西行「さはと言ひて衣返してうち臥せど目の合はばやは夢も見るべき」(山家集・701)というような古典和歌があるものの、実際に恋人が夢に見えているとは、どうも思いにくいのだが。パジャマを裏返しに着なかったためか、ここのところ見なかったひどい悪夢に、昨夜は魘されたのであった。
夢の中の街に迷ひて立ちどまる人の影なき商店街に
シャッターの閉まつたままの雑貨店うめきごゑする店の内より
この径をしばしたどれば猫町かいや猫も人も影ひとつなし
裏返しにパジャマは着るべし悪夢より恋する人の笑顔みるなら
裏返しにパジャマを着れば咎めらる