梅雨のさなかにもかかわらず、まあ良い天気だ。
李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』が文庫になったので早速読んだ。これが凄い小説だった。新宿二丁目を中心にした性の多様性の物語だが、そんなに容易いものではなかった。レズビアン、トランスジェンダー、アロマンテック/アセクシャル、バイセクシャル、パンセクシャル……知らぬことが多すぎる。それらの人間たちの生死を分かつような葛藤が涙ぐましいほどの濃度をもって描かれる。ときにほんとうに涙を滲ませている自分を発見する。ひよっとすると今年一番の本になるかもしれない。呉明益『歩道橋の魔術師』もそうだったが、台湾にかかわる小説家の力を感じさせる。
性のこと、そのむづかしさ。生きがたきおもひありしに、泣けてくるなり
部屋の中をコバエが飛ぶ。
わが家の裏のベランダに置く生塵コバヘたかりて腐臭を放つ
コバヘをたたきつぶさん。逃げまどふ虫との激闘 夏がはじまる