上原和『斑鳩の白い道のうえに』の講談社学術文庫版を読んだ。1975年の初刊本を学生時代に読んでいる。朝日新聞の「天声人語」の深代惇郎の絶筆も読んだ。しかし50年近く経って再び読んでみると、聖徳太子の「血塗られし手」やその「捨身の思想」のみではなく、建築史や美術史の学術的な見解が詳細・緻密に述べられていて、なかなかに読みでがあった。時間もかかった。
梅原猛は解説で「青春の書」とこの本を呼ぶ。上原も1924年生まれの学徒出陣組の戦中派であったことをあらためて知り、上原の青春がいかなるものだったかをあらためて納得。だから文章が熱いのだ。梅原もまた戦中派である。楽しく、厳しく、心躍る、充実した読書であった。わが青春の書でもあるのだ。そして池田克己の詩「法隆寺土塀」を思う。また法隆寺を訪ねたいものだ。
法隆寺をはじめて訪ねたときの記憶をたどる。
斑鳩のま夏の乾く道のうへ遠く五重塔を視てゐつ
となりにはまだ若かりし父がゐて搭のいただきを指さしにけり
昨夜はむすめがわが家に立ち寄った。
夜の道をむすめを送り妻とゆく三人のドライブすこしたのしき