在りし日のお伝のすがたに似もつかぬ髑髏を抱きて嗚咽しやまず
浅右衛門吉(よし)亮(ふさ)の首切りの失敗を心に泣くかつぶさに誌す
北側のベランダのバケツに冬深しことしはじめての薄氷を割る
<主人メモ> 今日も全き青天である。 綱淵謙錠『斬』読了。 以前に一度読んでいるのだがハードな読書であった。 三島由紀夫と森田必勝の切腹と介錯への綱淵の見解を確かめたくて、あらためて読み直した。 しかし、山田浅右衛門一族の悲劇を語るその哀歌(エレジー)は圧倒的な感動を誘う。 その終盤に高橋でん斬罪後日譚があり、情夫・市太郎(夢幻法師)がお伝の頭蓋骨と対面する哀切なる場面がある。