晴れ。寒い。
媚しく優しきお米に提灯の黒塗りの柄をぷいと差し出す
十町三方金沢城下の往来に行く人来る人皆見ゆるかな
就中、公孫樹は黄にて紅樹、青林、見渡す森は錦葉を含む
『孟子』離婁章句上63 孟子曰く、「規矩は方員の至りなり。聖人は人倫の至りなり。
君為らんと欲せば君の道を尽し、臣為らんと欲せば臣の道を尽す。二者皆堯舜に法るのみ。舜の堯に事ふる所以を以て君に事へざるは、其の君を敬せざる者なり。堯の民を治むる所以を以て民を治めざるは、其の民に賊する者なり。孔子曰く、『道は二つ、仁と不仁とのみ』と。其の民を暴すること甚しければ、則ち身弑せられ国亡ぶ。甚しからざれば、則ち身危ふく国削らる。之を名づけて幽厲と曰ふ。孝子慈孫と雖も、百世改むること能はざるなり。詩に云ふ、『殷鑒遠からず、夏后の世に在り』と。此の謂なり」
孔子曰く道は二つ、仁と不仁のみこれ守らねば国は滅びぬ
川本千栄『土屋文明の百首』
大陸主義民族主義みな語調よかりき呆然として昨夜は聞きたり 『六月風』
<大陸主義も民族主義もみな語調が良かった。人がそれを語っているのを、私はただ呆然として昨夜は聞いたのだった。>
昭和十一年の作。演説か、あるいは知人の話を聞かされたのだろう。日本は、「満州国」を「五族協和」などのスローガンを掲げて独立させた後、益々深く大陸を侵略しようとしていた。その人は時局に乗り、熱く威勢良く語っていたのだろう。「語調よかりき」には「語調はいいが、中身が悪い」という思いが込められる。「呆然として」も同意できない気持ちを示している。
幾度も幾度も催促をせしキング原稿料一首一円送り来ぬ 『六月風』
<幾度も幾度も催促を繰り返した結果、雑誌「キング」は原稿料として短歌一首につき一円を送って来た。>
雑誌「キング」は大正末に創刊され、昭和に入って百万部を超える売り上げを誇った人気雑誌だ。一首一円が高いか安いか現代からは推測しにくいが、この当時、大卒初任給が九十円ということだから、高くはないが、不当なまでに安い訳でもないのだろう。ただ何度も催促しないと原稿料が支払われないのは、作家にとって屈辱的なことだ。自分と短歌という文学が軽く見られた怒りが、「幾度も幾度も」の繰り返しに表れている。