2025年2月28日(金)

寒いが、やがて春のように。

  細月の薄きが残るみんなみの仄青き空無限のひろがり

  遅々として動かぬ朝の残り月みんなみの仄青き真中に

  しばらくは残りの月を追うたれど余りに遅き動きに堪へず

『論語』衞靈公三五 孔子曰く、「民の仁に於けるや、水火よりも甚だし。水火は吾れ踏みて死する者を見る。未だ仁を踏みて死する者を見ざるなり。」

人民にとって仁が必要なことは、水や火よりも甚だしい。それなのに水や火には、わたしはふみこんで死ぬ人もみるが、仁にふみこんで死んだ人はまだ見たことはない。

  水や火より甚だしきは仁徳なり水火に死ぬ人あれど仁には死せず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 七二 仁徳天皇

天皇は宴会をしようとして、日女島に行幸した時、その島で雁が卵を産んでいた。

そこでタケノウチノ宿禰ノ命を召し、歌をもって、雁の卵を産んだ謂れを尋ねた。

たまきはる 内の(あ)(そ)      命も長き建内
汝こそは 世の長人(ながひと)       聞くや 日本に雁卵産と
そらみつ 日本(やまと)の国に      知るや 日本に雁卵産と

雁卵(かりこ)(む)むと聞くや

  日女島に行けば雁卵産さまを見るそのいわれタケノウチ宿禰に問ふや

2025年2月27日(木)

朝は寒いが、少し暖かくなるらしい。

  映像には幾たびも見し山椒魚もったりとした水中の動き

  宿の庭に箱に飼はれたる山椒魚濃きさみどりの苔(み)にまとふ

  わづかづつ手足を動かすは山のけもの山椒魚は罠に落ちたり

『論語』衞靈公三四 孔子曰く、「君子は小知すべからずして、大受すべし。小人は大受すべからずして、小知すべし。」

君子は小さい仕事には用いられないが、大きい仕事をまかせられる。小人は大きい仕事をまかせられないが、小さい仕事には用いられる。」

  君子は小事には用いられず小人は大事をまかせられず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 七一 ハヤブサワケノ王

また、

椅立ての 倉椅山は        山の岩根嶮しいけれど
(さが)しけど             君が手を取り登るゆえ
妹と登れば (さが)しくもあらず    切り立つ山も軽々と

そこからまた逃げて、宇陀の曽邇まで逃げた時、ついに追手が捕えて殺した。

  速総別が女鳥を率ゐて逃げたるに宇陀の曽邇にて殺されたりき

2025年2月26日(水)1936年の二・二六事件から今年で89年目。

少しづつ暖かくなっているようだが、朝は寒い。

加藤郁乎『俳人荷風』読了。いいねえ、加藤郁乎は、もともと俳人だが、詩やエッセイも巧い。俳人荷風を書いても巧いのだ。書中にあげられた句をいくつか記しておこう。

知らぬ間にまた一匹や冬の蠅

持てあます西瓜ひとつやひとり者

極楽へ行人おくる花野かな

折からにさびしき風や後の月

泣きあかす夜は来にけり秋の雨

秋風のことしは母を奪ひけり

かたいものこれから書きます年の暮れ

わが庵は古本紙屑虫の声

  部屋の戸を這ひずり出づる老婆なりくちなはの如し鎌首上げて

  救急車に押し込められて体格のよき消防士に運ばれて行く

  救急病院は近くなれども道路の上がたぼこがたぼこ撥ねあがりたり

『論語』衞靈公三三 孔子曰く、「知はこれに及べども仁これを守ること能はざれば、これを得ると雖ども必ずこれを失ふ。知はこれに及び仁能くこれを守れども、荘以て

これに涖まざれば、則ち民は敬せず。知はこれに及び仁能くこれを守り、荘以てこれに涖めども、これを動かすに礼を以てせざれば、未だ善ならざるなり。」

人民を治めることの難しさを言っている。そうだろうなあ。

  知を得ても仁よく守るも荘以ちて、さらに礼を以て動かさざれば善ならず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 七〇 ハヤブサワケノ王

天皇は、この歌が耳に入り、直ちに軍兵をそろえて、殺そうとしたので、ハヤブサワケノ王とメドリノ王は、手を携えて逃げ出し、倉椅山に登った。その時、ハヤブサワケノ王が歌った。

椅立ての 倉椅山を       嶮し岩立つ倉椅の
(さが)しみと 岩(か)き かねて     山の岩根を登り得ず
わが手取らすも         われが手を取るいたわしさ

  嶮しく岩立つ倉椅山わが手取らすも二人のぼれず

2025年2月25日(火)

よく晴れている。

  老荷風のあとを慕ひて椿の花ぽつぽつと咲く小径を進む

  椿の花ぼってりと咲く一本の木を見て過ぐる路地の一隅

  椿の花赤きが咲きてはなやげるこのめぐりしばしうるほふごとし

『論語』衞靈公三二 孔子曰く、「君子は道を謀りて食を謀らず。耕すも餒え其の中に在り、学べば禄は其の中に在り。君子は道を憂へて貧しきを憂へず。」

  君子なるものは道を謀れば俸禄はおのづと入る貧しきを憂へず

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六九 メドリノ王

そのあとから、夫のハヤブサワケノ王が来たのだが、メドリノ王は歌った。

雲雀は (あめ)(かけ)る      雲雀は高く翔るゆえ
高行くや (はや)(ぶさ)(わけ)      速総別よ そこにいる
鷦鷯(さざき)取らさね        大きい鷦鷯(さざき)を取り給え

  ハヤブサワケよ雲雀のごとく高く飛び大き鷦鷯(さざき)捕へなされよ

2025年2月24日(月)

晴れてるが、寒い。

  後朝に分かれてつらき楕円の月この道さびしき女との別離

  女との別れに浮かぶ朝の月あかるきひかりはよりあはれなり

  木の藪に隠れ行きにし(みやこ)までなげきばかりに涙せりけり

『論語』衞靈公三一 孔子曰く、吾れ(かつ)て終日食らはず、終夜寝ねず、以て思ふ。益なし。学ぶに如かざるなり。」

前に一日中食事もせず、一晩中寝ないで考えたことがあるが、むだであった。学ことには及ばない。

  終日食はず終日い寝ず考える無駄なり学ぶことには及ばざるかも

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六八 メドリノ王

仁徳天皇が67の歌のように尋ねると、メドリノ王は答えて歌った。

(たか)(ゆ)くや (はや)(ぶさ)(わけ)の     空高く飛ぶ隼の
御襲料(みおすひがね)           (みこ)(かつぎ)(きぬ)を織る

これによって、天皇はメドリノ王の心をさとられて、還幸になった。

  空高く飛ぶ隼の王が着る被の帛織るしかく愛せる

2025年2月23日(日)

晴れてる。寒い。

今日も俳句

  夜深くペットボトルに茶を喫す

  これの世とあの世のさかひに椿咲く

  濃きさみどり色濃き花の椿なり

  カフェ・ラテをストローに飲む今宵かな

『論語』衞靈公三〇 孔子曰く、「過ちて改めざる、是れを過ちと謂ふ。」

過ちをしても改めない、これを本当の過ちという。

まあ、そうだよな。

  過ちても改めざればそれこそを真の過ちといふ

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六七 仁徳天皇

天皇は弟のハヤブサワケノ王を仲に立てて、異母妹のメドリノ王を望んだところが、メドリノ王は使者のハヤブサワノ王に、「皇后様の嫉妬が強いので、ヤタノ若郎女も、思い通りに召すこともできないのでしょう。ですから、わたしは仕えたくありません。あなたの后にとわたしは思っています。」

こう語って、すぐに婚姻になってしまった。そこで、ハヤブサワケノ王は、それきり天皇に返事することができなかった。

天皇は、今度は直接にメドリノ王のいる所に行き、その殿の戸の閾に立つと、メドリノ王は、機に上がって衣を織っていられた。天皇は歌で、 

(め)(どり)の わが(おほきみ)の       女鳥の王の織る機は
(お)ろす機 誰が(たね)ろかも     誰に着せよと織る機か

  女鳥のわが王の織る機はいったい誰に着せむために織る

2025年2月21日(金)

晴天なれど、寒いのです。

  上空の高きところに残りの月楕円形して明るきかがやき

  後朝の月にやあらむ西空に明るき楕円のひかりかがやく

  この空にかがやく今朝の残りの月楕円型なれど妙に明るし

『論語』衞靈公二八 孔子曰く、「衆これを悪むもの必ず察し、衆これを好むもの必ず察す。

大勢が憎むときも必ず調べてみるし、大勢が好むときみ必ず調べてみる。(盲従はしない。)

  憎むときも好めるときも察すべし盲従するなく必ず調ぶ

『古事記歌謡』蓮田善明訳 六五 仁徳天皇

天皇が、ヤタノ若郎女を慕って、贈った歌、

八田(やた)の 一本(ひともと)(すげ)は        八田の小菅はただひとり
子持たず 立ちか荒れなむ    子もなく栄える時もなく
あたら菅原(すがはら)           立枯か闌れか惜しいもの
(こと)をこそ 菅原と言はめ     口でこそ言う 菅原と
あたら(すが)(め)          心はいとしい清し女よ

  八田の乙女は子を持たず栄えることなし心のみ愛し